「奴隷」という表現は、現代においては、日常生活のなかであまり現実味のあるものとして捉えられる機会は少ないかもしれません。
多くの場合、歴史のなかの制度、あるいは過去の出来事として認識されるものです。
ときに、極端に厳しい従属関係にある相手に対して、「奴隷のようだ」と比喩的に使うことはありますが、それも象徴的な表現にとどまることがほとんどでしょう。
しかし、「奴隷意識」となると話は少し変わってきます。
意識の領域は、時間や時代を超えて広がる性質をもつため、私たちが思っている以上に、奴隷的な構造や思想は、いまなお人々の内側に影響を及ぼしているように感じられます。
歴史ドラマや絵画で見る「奴隷」の姿と、現代社会における人々の在り方は、表面的には大きく異なります。
そのため、同じ根をもつものだとは気づきにくいのかもしれません。
確かに、世界の一部では、いまだに実質的な奴隷と奴隷使いの関係が存在しているともいわれます。
しかし、制度や法律の上ではそれは禁じられており、本質的な「奴隷意識」が解放されていけば、物理的な支配構造もより早く解消されていくはずです。
志麻ヒプノのクライアントさんのなかにも、仕事や働き方、人間関係において、「奴隷意識」の影響を受けていたり、一時的な変化によってその意識とつながってしまっている方がいらっしゃいます。
この意識から解放されていくと、組織や職場での人間関係、上司や部下との関係、仕事の捉え方そのものが変わっていきます。
過度に責任を背負い込むことがなくなり、自発性と健全な距離感をもって、自分の役割に向き合えるようになるのです。
しかし初期の段階では、本来の業務や役割の範囲を超えて、
「もっとやらなければ認めてもらえない」
「自分がやらなければ迷惑がかかるのではないか」
と必要以上に責任を引き受けてしまう傾向が見られます。
さらに奴隷意識が深まると、
「この仕事がなければ生きていけない」
「自分や家族の未来はここにすべて委ねられている」
といった感覚が強まり、本心では従いたくないのに、従わざるを得ないという強いジレンマを抱くようになります。
本質的に、その仕事や人間関係に問題がある場合は、奴隷意識とは異なる形で「違和感」や「限界」が現れ、変化を促す感覚が伴うものです。
しかし、それが奴隷意識によるものであるならば、そこから抜け出すことで、これまで重く感じていた状況が軽くなり、むしろやりがいや新たな可能性が見えてくることもあります。
たとえばKさんは、チャレンジのつもりで就いた仕事が、実際には自分の期待していた内容と大きく異なり、転職を考えるようになりました。
しかし同時に、こんな迷いも抱えていました。
「なぜか転職することも怖いんです。
けれど、このまま今の会社で仕事を続けるのも不安で……。
条件だけを見れば、周りからは“良い仕事”だと思われると思います」
ほかのご相談内容もあわせて拝見していくなかで、そこには「奴隷意識」と共鳴しているエネルギーが感じられました。
こうした意識は、実は私たちの集合意識のなかに広く存在しており、波長が合うと、個人レベルで強く影響を受けることがあります。
なお、奴隷意識は仕事や労働に限らず、人間関係、特定のグループや組織内の立場、お金や地位、名声といったものにも投影される場合があります。
意識が強まるほど、現実味を帯びていきますが、一方で、何かのきっかけによって、あっさりと消滅する性質ももっています。
歴史上の「奴隷」という構造と、現代の状況は物理的には異なりますが、内面や感覚のレベルでは、非常によく似ているところがあるように思います。
ときには、自分自身のマインドが、自分を奴隷化してしまっているケースもあります。
その場合、理由もなく身体が痛くなったり、心理的な苦しさが増したりといった形でサインが現れることがあります
ここで、奴隷意識に該当しやすい感覚を、いくつか挙げてみます。
• 従いたくないのに、従わなければいけないと感じる•見せしめや、罰の対象になるのではないかと恐れている
• 目立つことが「危険」であると感じる
• 自発的ではなく、「働かされている」という感覚がある
• 言うとおりにしないと罰せられる
• 従わなければ「生きていけない」と感じる
• 仲間意識ではなく、互いに疑い合う関係になっている
• 助け合うよりも、裏切ることで身を守ろうとする
• 生と死が紙一重のような、極端な不安定さを感じる
• 逃げ場がなく、避けられない感覚がある
• 奴隷であるという意識に苛まれている
• 奴隷使いすらも、その構造に縛られていると感じる
たとえば、セイクリッドアクティベーションのヒーリングモダリティのなかにも、「奴隷意識の解放」という項目があります。
これは、自分では気づきにくい深い部分に存在する奴隷意識に働きかけ、解放を促すものです。
直接的な因果関係がなくとも、相関的に作用している層にも影響を及ぼすと考えられています。
奴隷意識から抜け出すには、まず「気づき」と「勇気」が必要なのかもしれません。
そして何よりも、自分自身の本来の感覚を思い出すこと――そこから、解放のプロセスは静かに、しかし確実に始まっていくようです。




















