「人付き合いが苦手」「人と関わるのは煩わしい」「人間関係が面倒」──こうした思いを抱く方の多くが、その理由に「疲れるから」と挙げます。
この「疲れる」という感覚は曖昧ではありますが、ストレスを受けたり、面倒な事態に巻き込まれた結果の“心身の消耗”といえるでしょう。
とはいえ、そのような方々も、関わる相手や関係性によっては「人間関係は大切」「よい関係は育てたい」と考えていらっしゃいます。
実際には、利害関係をわきまえながら距離感を工夫して関わることで、こうした疲労感から距離を取る方も少なくありません。
世の中には人間関係や付き合い方に関するノウハウも多く、自分の目的に応じて活用できるものもあります。
しかし、現代のように人との関わりが多く、情報も多い社会では、人混みも含めて、エネルギーを消耗しやすい環境にあると言えるでしょう。
社会性と対比するように感じますが、スピリチュアルやヒーリングの観点では「愛をもって関わる」「自分を愛する(大事にする)ことが、相手を愛することだ」と言われるのも合点がゆくところです。
エネルギーを消耗する「関わり方」
このような“疲れ”は、私たちが「生物としての人間」というより、「社会で生活する存在」として生きていることに起因する部分が大きいと考えられます。
特に、特定の誰かとの関わりで過剰にエネルギーを使ってしまう場合、それは「お互いの存在そのもの」ではなく、「関係性や関わり方」にエネルギーを注いでいるからかもしれません。
そうした関係には、義務感が潜んでいることも多く、仕事上の付き合いに限らず、「こうあるべき」「〜しなければ」といった内面の価値観や思い込みが関与している場合があります。
自己投影がもたらす“疲れ”
このようなエネルギーの消耗の背景には、「自己投影」が関係していることがあります。
自己投影とは、自分の内面にある感情や状態を、他者や物事に写し出して受け取ってしまう心の働きです。
無意識に行われることがほとんどで、「○○さんに自己投影しているな」と自覚しているときは、すでに投影の影響から抜けつつあると言えるでしょう。
この現象は、自分が直接には受け入れがたい感情や状態を、相手に帰属させてしまう無意識の自己防衛でもあります。
たとえば、自分のなかに抑えた怒りや不満があると、周囲の人々が自分に対して怒っているように感じることがあります。
当人には「周囲の怒り」と「自分の感情」は別物に見えていても、内面を深掘りしていくと、それらが重なるポイントが見えてくることがあります。
また、自分の弱点や課題が、他人のものとしてはっきり見えてしまう場合もあります。
あるクライアントのKさんは、仕事の相手の問題を自分が解決しなければならない状況に巻き込まれ、結果として非常に疲弊してしまったそうです。
関係上は「やってあげる側」と「やってもらう側」に見えるのですが、Kさんは相手の問題に引き込まれるループのような状態にいたのです。
こうしたケースでは、自己投影のトリックが無意識に作動している可能性があります。
Kさんは、自身の過去の課題がクリアになると、不思議なことに、以前のように問題をもちかけてくるときはタイミングが合わないなど、巻き込まれていないと語っていました。
自己投影は特別なことではない
自己投影は稀な現象ではなく、人と関わる中で自然に生じたり、また自然に解消されたりする心の働きのひとつです。
自己防衛としてだけでなく、他者との協調や共感を育む過程でも役立っているのです。
たとえば、相手に対して抱く好意を「相手も自分に好意をもっている」と感じることがありますが、これも自己投影の一例かもしれません。
「じゃあ、どうやって本当の好意と見分ければいいの?」と疑問がわくかもしれませんね。
実は、自己投影でない場合は、「相手がどう思っているか」があまり気になりません。
逆に、相手の気持ちを強く気にしているときは、自分のエネルギーが漏れていたり、消耗が起きていたり、何らかの投影が働いている可能性があります。
透視やリーディングのセッションでは、「相手が自分をどう思っているのか知りたい」というご相談がよくありますが、これは自己投影が背景にあることが少なくありません。
まずは「相手」よりも「自分」に意識を戻すことが大切です。
最近では、SNSでのやり取りに疲れてしまう方も多く見受けられます。
不特定多数の主張や反応に触れる中で、感覚的な自己投影が起きたり、他人の相互投影に巻き込まれることもあります
そうしたとき、自分のエネルギーをきちんと自分のものとして保っておく感覚が、投影による疲れを防ぐ助けになります。
自分のエネルギーを「所有」する
対人関係での疲れには、実際に相手が疲れており、その波長を無意識に受け取ってしまっているケースもあります。
これもまた、自己投影が働いていることがあります。
エネルギーワークの世界では、「エネルギーが広がりすぎている」「エネルギーが漏れている」と表現することがありますが、平たく言えば、「自分に集中できていない」状態です。
思考だけでなく、自分の在り方として、自分のエネルギーをしっかり「所有」することが大切です。
ふだんの状態に対して無意識が起こす現象だからこそ、自分のエネルギーを取り戻し、持ち主として扱うことが、不本意な自己投影の予防になるかもしれません。