現代社会に生きる私たちにとって、仕事や生業は、人生や生きる目的を支える中心に据えられているようです。
人類は、生存のために何らかの働きや活動をしてきました。狩猟をはじめ、食べるため、生き延びるため、共同体を維持するために、人は何かしらの役割を担ってきたのでしょう。
しかし、今の社会は、より明確に経済主義に基づいて成り立っています。その構造を維持するために、そこに所属する人々が「仕事」という活動をすることで、社会全体のシステムが動いています。
そのため、失業したり、仕事が奪われるような危惧があると、主観的には「自分はどう生きていけばよいのだろう」と考えます。近年は、AIの台頭によって消える職業、という話題もよく取り上げられますね。
一方で、もっとマクロ的な意識では、生活や社会の基盤そのものが揺らぐような不安を抱くのかもしれません。
個人のレベルでは、転職について迷う人たちは、どの世代でも増えているように感じます。2024年の正社員転職率は7.2%、2026年は7.6%と上昇しています。転職者のボリュームゾーンは20代・30代が中心とはいえ、近年は40代・50代の転職割合も明確に上昇トレンドだと言われます。
また、定年が見えてくる数年前になると、定年後も仕事を続けるのかどうか、というテーマが現れてきます。そうなると、「今の仕事、今の会社に居続けてよいのだろうか」という、世代特有の転職の迷いも少なくありません。
会社勤務に限らず、また正規雇用でなくても、それぞれの仕事や活動のなかで、転職や働き方の変更を考える機会は多いと思います。
志麻ヒプノでお聞きするご相談のなかでも、特にZoomや電話セラピーのようなスポット的なセッションでは、かなりの数が仕事に関するものです。
世代や雇用形態を問わず、転職を考えるとき、また転職先の選択に迷うとき、ご自身の主観では、その仕事内容、雇用先の経営状況、人間関係など、独自の問題によって背中を押されているように感じることが多いでしょう。
積極的に転職を決意し、仕事ベースで転職活動に入るときには、「仕事」「働くこと」「仕事による対価や満足感」などが、基準となる課題になります。
一方、転職することや、転職先の選択に迷うとき。
たとえば、なかなか見つからない、決まらない、採用が決まったのに不安になる、という場合には、ご自身の仕事以外のところに、実は向き合ったほうがよい課題があることが多いです。
向き合えば、転職も含めて物事が動き出す、という意味です。
実際、ある程度はご本人も、「転職そのものだけが課題ではない」と気づいていらっしゃるからこそ、セッションにいらっしゃることが多いのです。
たとえば、このようなご相談があります。
「転職が多く、落ち着いて将来、結婚や生活に備えたいので、今度こそ自分に合う会社に行きたい」
「○○代を充実して過ごすために、今の仕事を続けていても、そういうビジョンがない気がする」
「子どもたちが成人したので、もっと自分たちの暮らしを優先できる仕事に変わりたい。今の職場が忙しすぎる」
「任されている仕事がちゃんと評価されていないし、疎外感がある。自分に合う仕事は何だろう」
「契約で働くスタイルが自分に合わない。でも、仕事をしないと生きていけない」
おそらく、日常の仕事中には、些細なことから、印象的なトラブルやエピソードまで、さまざまな出来事があります。それらがきっかけとなり、「転職」や「退職」という言葉が、ふと頭をよぎることがあるでしょう。
なかには、転職活動を進め、採用結果をもらったところで二の足を踏む方もいらっしゃいます。特に、過去に転職経験を積んできた方には、そのようなケースも見受けられます。
ご自身の内側の世界から見たとき、転職そのものがチャレンジの的ではないことがあります。
いくつかの事例を踏まえて、挙げてみたいと思います。
仕事と生活の比率を変えるとき
仕事と生活の比率を考えるとき、仕事の時間や日数が基準になることが多いでしょう。
しかし実際には、仕事時間だけではなく、自分の労力や心理的な負担なども加味して、主観的に比率を測っていることが多いものです。悩んだり、迷っているときは、どうしても主観的になります。
いわゆるワークライフバランスの比率は、仕事内容や個人の嗜好によって異なります。
そのうえで、ご自身にとって「今」の仕事と生活を見直すことが必要になる時期があります。暮らし方、家族との関わり、自分自身のこと。そうしたものを見直す、あるいは変えていくことを示唆するチャレンジです。
以前は、仕事の比重が高いことで充実していても、今もそうとは限りません。また、その逆もあります。
子どもが生まれる前から、夫婦で仕事をしている年数が長く、育休などを経て仕事に復帰した後も、以前と同じように仕事が主体となる暮らしをしているAさんがいらっしゃいました。
将来の生活や教育費などのために仕事は続けたい一方で、家庭の居心地の悪さを感じ始めていらっしゃいました。口論も増え、喧嘩の後に仲直りしにくい。あるいは、仲直りするタイミングがない。そのような状況が続くなかで、転職に迷っていらっしゃるケースです。
ご家族との生活と仕事は、土台でつながっています。
しかし、ご自身の転職について率直に相談したり、意見は違ってもよいので聞いてもらったりするような状況がありませんでした。
幸い、転職先の候補は、家庭生活との両立がしやすい職場環境のようでした。そのため、転職の迷いは、仕事と生活の潜在的なチャレンジをクリアするきっかけでもあったようです。
コミュニケーションや人との関わり
コミュニケーションや人間関係は、多くの仕事の根底にあります。
たとえ、対面の仕事ではない、職場に同僚がいない、リモートワークである、システムや研究ベースの仕事である、といった働き方であっても、間接的な交流があって成り立っています。
それが、数字や文字などを介したコミュニケーションになる場合もあります。
ときには、その仕事圏外のところで、自分の仕事に本質的に関与するようなコミュニケーションや人間関係もあります。
おそらく、何らかのコミュニケーションや人との関わりがないと、生命力が弱くなるという、生命の前提があるからかもしれません。
それはさておき、仕事内容や働き方を問わず、コミュニケーションや人間関係が、転職のチャレンジになることはとても多いです。
決して、コミュニケーションや人との関わりが多く、活発なほうがよいとは限りません。それぞれに、自分に合うスタイルがあります。
その違いが、転職の肝になることは少なくありません。
昨今、転職代行サービスがあるのも、象徴的なことでしょう。
コミュニケーションや人間関係のチャレンジの基本は、ほとんどの場合、自分の中だけで、コミュニケーションや人との関わりが劇場化しているかどうかです。
実際にあったやりとり、会話、態度があるとして、それを自分専用の舞台の上で上演していることがあります。ときには、自分自身も演出家となります。
これは皮肉ではありません。
自分のなかの世界のほうが重たくなり、外側の世界、つまり肉眼で見える世界に影響を与え始めるのです。
そして、よくわからない葛藤、迷い、不信、苦しさとして感じられるようになります。ある種のバグの状態と言えるかもしれません。
このような課題は、仕事に限らず、プライベートの人間関係でも同じパターンとして発動することがあります。
転職したり、配属が変わったりしても、人間関係やコミュニケーションが原因で居心地が悪くなるときの特徴とも言えるでしょう。
エネルギーレベルで仕事を観察する
仕事では、いろいろなことが起こるでしょう。
適性があり、得意な仕事であっても、恵まれた職場環境であっても、何かしら不都合はあるかもしれません。
エネルギーレベルで、仕事や働くことを観察するとすれば、まず大切なのは、ご自身のエネルギーの状態をルーティンとして整えておくことです。
すると、不調や不具合が起こったときに、早めに気づくことができます。
物理的な現象として起こったように見える前に、感覚的にわかるということです。
そして、まだエネルギーレベルであれば、他者や職場に問題があるように見える段階でも、自然に望ましい状況へと動いてもらうことが可能です。
少しずつ遅れてくると、問題や困ったことの原因は、自分にはコントロールできないところにある、と認識していきます。
ちなみに、セッション後に不思議と状況が変わったり、ご自身の考え方や行動が動きだしたりするのは、この場ではエネルギーレベルで話をしたり、やり取りをしたりしているからだと言えるでしょう。
エネルギーには、個人のような主体はありません。
そのため、指示や支配的なものではありません。むしろ、有機的な働きを引き出すものになります。
転職の迷いの渦中に入ってしまうと、なかなか難しく感じるかもしれません。
しかし、日頃の仕事や活動について、ご自身の内側を観察する視点として、役立てていただければと思います。
参考:
転職動向調査2026年版(2025年実績)速報
転職動向調査2025年版(2024年実績)マイナビキャリアリサーチLab
























