複利効果とは、例えば投資において、運用で得た利益を元本に加えて再び投資に回すことで、その利益がさらに次の利益を生み、資産が雪だるま式に大きくなっていく仕組みのことです。
そこから転じて、「習慣の複利効果」や「学習の複利効果」という考え方もできます。早く始めるほど積み重ねる期間が長くなり、成果が次の成果を生む回数も増えるため、その効果は大きくなります。
皆様にも、日々の習慣や心がけなど、一歩一歩積み重ねてきたものが、今では大きなプラスやポジティブな成果につながっていることがあるかもしれません。
先日、数年前に早期退職されたクライアントのAさんが、久しぶりにお顔を見せてくださいました。
現在は週に数回、紹介されたお仕事を、生活とのバランスを取りながら、ご自身にとって働きやすい形で続けていらっしゃるとのことでした。体調や生活も整い、自由に行動できる時間も持てているそうです。一方で、長年仕事を続けてきた感覚からすると、現在のお仕事も契約の先行きが定かではなく、今後も働き続けられるのかなど、将来に対する不安は尽きません。
なお、50代以降になると、早期退職や定年退職についてのご相談が一気に増えます。男女を問わず、また、わずか数年の違いでも、仕事に対する価値観や、その世代ならではの生活事情は変わってきます。そのため、本当にケース・バイ・ケースです。
Aさんのこれまでを拝見したとき、まさにお金の投資に例えるなら、人生に複利が働いている状態だと感じました。20代、30代、40代、50代と積み上げてこられたものが、現在の仕事や生活の安定につながっているのです。
複利が十分に働くようになると、例えば投資では、年齢を重ねてから積み上げた資金を取り崩しても、運用によって補われ、資産が大きく減りにくい段階に入ることがあります。
Aさんにも、これまで蓄積してきた努力によって、この先の生活や仕事、経済面、さらにはやりがいにおいても、大きく不足することはなさそうな状況が見えてきました。
暮らしが整っているだけでなく、その整え方も少しずつ更新されています。健康にも気を配り、いわゆる「良い暮らし」を着実に積み上げてこられた姿勢がうかがえました。
興味深いことに、年齢を重ねているにもかかわらず、身体のバランスも整い、足元も安定しておられます。少し押されたくらいではふらつかないような、体幹の強さが感じられました。実際に、ご自身でもトレーニングを続けているとのことです。
さらに印象的だったのは、豊かさにつながるセイクレッド・アクティベーションを流したときのことです。
Aさんはずいぶん前から、「自分はお金のために生きているわけではない」という感覚に気づき、それを腑に落としておられました。まさに、ご自身の生き方が生んだ複利が、お金の面での豊かさにも投影されているようでした。
その豊かさは、贅沢をするか、節約をするかといった基準によるものではありません。目の前の金額だけを理由に考えたり、決断したりする必要がないこと、つまり、不安に突き動かされて選択する必要がないことを示しているようでした。
そして、その感覚は、おのずと日々を感謝して過ごす姿勢へとつながっていったようです。
一方、Bさんは難しい仕事を担当するチームに配属され、仕事内容やチームメンバーとのコミュニケーションに苦戦し続けていました。
「自分にはできない」 「みんなに迷惑をかけているのではないか」
そんな思いを抱え、しんどい日々が続いていました。しかし、あるタイミングで、「自分はこの仕事には向いていない。自分にも、向いている仕事と向いていない仕事があるのだ」ということが、ようやく腑に落ちたとおっしゃいました。
お声はこれまでになく力強く、自信に満ちており、明るい響きもありました。
仕事については、業界や所属先の慣習、経営状況などによっても事情が異なるため、やはりケース・バイ・ケースです。ただ、Bさんが次の仕事のステージへ向かうための扉が開いているようなビジョンが見えました。
困難な仕事を続ける中で、ご自身の意思で一つの決断にたどり着けたという意味では、これまでの経験が複利効果を生んだのかもしれません。また、Bさん自身はお気づきではないかもしれませんが、難しい仕事を続けている間に、コミュニケーションの力も格段に向上しているようでした。
一般的に、長期投資を始めようとすると、タイミングに迷うことが多いといわれます。
「いつから始めればよいのか」 「今は得をする時期なのか、損をする時期なのか」
そのように考えて、躊躇してしまうのです。
しかし、長期的に複利効果を得ようとするなら、始める時期が早いほど、最終的な効果は大きくなります。長い期間の途中には、当然、上がったり下がったりする局面もあります。さらに長い目で見られるようになると、それも一つの周期であると分かり、次第に慌てなくなっていきます。
広い意味での豊かさを持って人生を生きるという観点から見れば、皆様にも、複利効果によって築き上げている何かがあるのではないでしょうか。
他者や世の中のトレンドと比べてしまうと、それは見つけにくくなります。
しかし、純粋に自分自身に焦点を当ててみれば、今日まで生き続けるための糧となってきたものの中に、その答えがあるのかもしれません。
また、複利効果は、自分一人の力だけで生じるものではありません。周囲の人々や社会など、さまざまな力との関わりによって生まれます。そして自分自身もまた、誰かや何かの複利に力を加えているのでしょう。
先ほどのAさんの場合は、仕事や暮らしを支える家計、そしてやりがいなどに複利効果が表れているため、比較的分かりやすいでしょう。
では、みなさまは、これまで、どのような複利効果を人生に生かしてきたでしょうか。
年齢にかかわらず、複利効果は、ある程度の時間をかけて膨らんでいくものです。
また、転職や環境の変化、人間関係の入れ替わり、お金の出入りの激しさなどが気になっている場合でも、そのサイクル自体が何らかの複利効果を育んでいる可能性があります。
複利効果によって最終的に何を得るのかは、ご自身が決めるものだと感じます。そして、それはやがて、自分だけではなく、周囲の人々や全体の力にも繋がっていくのでしょう。






















