好きな仕事でも、仕方なくやっている仕事でも、それなりにストレスを感じることはあるでしょう。そのストレスがネガティブでないにしろ、窮屈さや負荷がかかりすぎれば、しんどく辛くなるものです。
日本人の場合、仕事をして働くこと=生きること という考えが相当浸透しているため、仕事からくる影響は日々の暮らしや人生に大きくのしかかるようです。
とはいえ、個々人それぞれ価値観がありますので、たとえば、仕事よりも恋愛のほうがストレスになり「人生に影響するわ」という方も、これからの話は共通しているはずです。ポイントに気づいてみると面白いかもしれません。
ここではややこしくなりますので、仕事、働くことに焦点をあてます。
多くの人は、仕事や働くことで得られる対価によって、自分の仕事の質や評価を見なすものです。特に会社などに勤務しお給料をもらっていたり、社長や経営者陣でも報酬や資産によって、自分の立場や価値を計るでしょう。お金は十分にあるよ、という方は、実績や名声などかもしれません。
ストレスや負担などが溜まってくると、それまでは価値、評価などにそれほどとらわれていない人でも、収入や数字という資産ベースで考えて「計算」を始めます。
「はて、この働きから十分なお金を得ているのか?」
「もっとたくさんお金(給与)がほしい」
「もっと割のいい仕事をしたい」
左様ごもっともです。
しかし、その計算スパイラルからうまく知恵を使い、好機を掴んで抜け出せる人はごくごくわずかと思われます。ここで停滞し同じ状況を続けてしまう人のほうが圧倒的に多いでしょう。
娘さん経由のご予約で、下半期のリーディングセッションにいらしたMさん。すでにシニア世代に入り久しいものの、現役で今もお仕事をされています。そのお仕事が性に合っているのか、仕事が大変でもお元気です。
Mさん「私、まだ働かなきゃだめですか?先のことを考えると、仕事があるうちはやらないと・・・うちはお金が貯まらなくて・・・」
笑顔でお話しされるので、それほど深刻な印象は受けませんが、やはり、本音は。。。
Mさん「今年の下半期も、私、仕事してます??」
とまるで状況を占うかのようにお尋ねされます。
可能性としては、「はい、まだしばらくかなり必要とされていますので、お仕事をされていらっしゃりそうですね」と拝見しました。
Mさんはお話しのとおり、「お金が貯まらない」「お金のために仕事をしなければいけない」というよくある考え方をおっしゃっています。ただ、仕事でも、何事でも、お金以外のあらゆるものが交換されているはずです。Mさんは「働くことと、給与のやりとり」だけが為されているわけではないのはおわかりです。お金が貯まらないことについても、冗談めかしに、
Mさん「お金でお肉とかふんぱつして買ってきちゃうから、食べ物になってうちの家族は元気に暮らせるのよね、なんて家で話てますけど(笑)」
ともおっしゃっています。
さて、このMさんがお仕事を通してどんなエネルギーの交換があるかを拝見すると、確かに、仕事から給与(お金)というカタチでいただいているのは、2ー3割のエネルギーです。ほかには生きがいや生活の摂生、社会との関わりによる人との交流など、想像しやすいものに変換されています。
何よりMさん特有なことは・・・
働くことで「寿命」を得ている、というものでした。
寿の命、という文字がすこーんと目の前に視えました。
これは、誰でもそうというわけではなく、Mさん特有のこれまでの生き様や、過去の働きによって縁があり今のお仕事についている、などの経緯があるもので、「長生き」というより文字どおり、めでたい寿級のお生命をいただいているものと、拝察しました。
いくらお金を積んでも、そうそう寿命は買えませんから・・・・
それをお伝えしたところで、
Mさん「(意外にふつうに)あら、そうなんですねー。生きるために働いているつもりなんですけど、働くことで生かされているんですかね・・・」
社会との関わりがキツくなり、長年の会社勤めをやめてから、数年は稼業をサポートする仕事についていらっしゃるKさん。おかげでトラウマのようだった仕事のストレスはかなり緩和し、ある意味人生が救われてきたようです。
しかし、一方ではこのままでいいのか、と釈然としないご様子です。そして、セッションにいらしたときには、「このへんでもう働き方を変えるべきでは?」というお考えを持っているようでした。働き方=生き方を変える、という意味かもしれません。
昨今、世の中、働き方の改革や、ニューノーマルという言葉が飛び交うように、個人ベースでも(たとえ社会とそれほどつながりのない暮らしをしていても)改革や新しい様式に移行する時期になっています。Kさんも当然の流れのようです。
ストレスに感度が高い傾向の人は、ストレスを感じた時点で、思考や行動がフリーズしがちになります。するとそのままじっとしているために、さらに辛さが増してきます。さらに、関連する過去などあったストレス経験を総動員して思い出すなどし、ますます固まって苦しくなりがちです。
そんなときは、「何を得ているのか?」を見つけてみましょう。
特に辛いこと、問題、困ったことなどには、潜在的に利得や獲得しているものがあるはずです。それに気が付くと、問題や辛さから自由になる糸口になります。ここからほぐれていくと行動や発想が豊かになりはじめます。
仕事そのものや、仕事にまつわるネガティブなことがあると、ついつい計算する頭が働き、給与やそれに匹敵する損得で状況を捉えがちになるでしょう。そして、不足や損のほうに傾きます。
そんなときは、自分なりにその仕事や、あなたが働いていることで得ているものを見つけてみましょう(これはご自分にしかわからないものです)。時には、「あぁ、そうとも言えてる」といったシュールなものを得ているかもしれません。
ネガティブな思いが優勢なときは、つい働くことに受け身になり、やらされている感が強くなります。
得ているものがわかると、あなたは、「自分が働くこと」「自分が仕事をしている」という能動的な姿勢に変わります。さらに、その得ているものが案外素晴らしいものだとわかると、能動的から積極的になり、自分が思うような方法や心づもりで働いたり、良いように工夫できるかもしれません。
そこから、さらに明るい働きになっていくなら、「働かせていただいているんだなぁ」という有り難みや、恵に感謝する思いが湧いてくるかもしれません。
もともとお金という対価のつかない、家事や育児などにも当てはまるものです。
「人が動くと書いて『働く』」と国語で習った記憶があります。だから、働くことは、人が生きて動いているわかりやすいカタチを表しているのかもしれません。お仕事によってか、あるいは別の何かで「動く」のかは人それぞれですね。