「進路相談」といえば、学生の進学や就職を連想します。
今や大人の方々は、かつて何度か進路について考え、答えを出してこられたのではないでしょうか。
春の兆しが増す時節のせいか、昨今は、大人の方々の次なる進路相談がとても増えています。
春に限らず、最近は、社会の定めている「定年」の数年前から「定年後には給与が減額しても、会社には留まろうか」「定年を機に退職し、やってみたいことにチャレンジしようか」と思案するクライアントさん方が目立ちます。
まだ定年の年齢は先で、FIREという進路も候補にあがるでしょう。
そして、進路および退路を考えるために、セッションにいらっしゃいます。
以前にも増して、ひと世代以上前の事例が、自分には必ずしも該当しない状況になっています。
若い頃に想定していたようには、ご自分自身も、周りの状況も変わってしまったように感じ、葛藤や不安は少なくないご様子です。
進学や就職の進路相談のように、前向きに未来が広がっているとは感じにくく(尤も、現在の学生・若い世代が進路や就職に明るい印象を持っているのかは微妙ですが)、人生の整理や、家族や周りへの責任を抱えているストーリーが印象的です。
個人の事情はさまざまですが、予め考え検討する猶予や、相対的にゆとりがある方々の進路・退路について、幾つか参考になりそうなことを挙げてみたいと思います。
お仕事をベースにお考えの「定年」に基づく進路・退路と、漠然とした「年齢や時期」に起因する進路・退路は、相違点はあるものの、共通する抑えどころはありそうです。
なお、昨今のクライアントさん方のケースや、そこからの考察に基づきますので、統計や世論に沿ったものではありません。その点、ご了承ください…
① 検討、相談、熟慮、悩む・・・という価値がある
雇用先の「定年」や年金受給がある方々は、期日がある程度決まっています。
個人の次の生き方への針路(人生の航路のようですが)をはかっている場合は、自分に概ねの決定権があるでしょうが、全般的には家族や周りの状況との兼ね合いを考慮している方が多いです。
あと数年で勤務先の定年を迎える夫が悩んでいる様子を、心配されているKさん。
ご主人を心配しつつも、定年によって家計のやりくりや、子供たちの教育費がかかる時期にあることから、運命共同体としての心配がある、とのこと。
Kさん「前々から夫は会社の仕事は続けたくないと言っているんですが、やはり将来の生活費、経済事情が心配らしく…かといって、定年後も雇用継続するとかなり給与は減額されるらしいです」
とかく、透視カウンセリングをお受けになるときは、未来予見や占いではないものの、「先行きを知りたい」「正解はなんだろう」という考えが働きがちになります。
人生、そういうものではないだろう、と理解はされていても、なにか決め手となるヒントを必要とされているのが特徴です。
定年を控えている方によって、視える景色や情報は変わりますが、Kさんのご主人の場合は、「今は、あれこれ検討したり、悩んだり、相談したり・・・ぼやいたりする時期」であり、それがまた絶妙に価値のある過ごし方である印象が読んでとれました。
つまり、相応の時期になれば、ご主人はちゃんと次の進路の決断を出す、おわかりになる、ようなのです。
Kさんとしては、しばし、ご主人の悩むお小言に付き合いつつ、いずれ決まることを信頼していればよいわけです。
季節的な例えをあげれば、「いつから暖かくなるの?」「ずっと寒くて春は来るの?」という気象状況に似ています。気を揉んでも、結局、春はやってきます。
とかく、不安から悩んだり葛藤することはストレスが強く、ネガティブに思われがちですが、人生のおいて、次のフェーズに進む前には常套的に起こる事象と思われます。
Kさんのご主人のように、時期ありき、ということもありますので、決まる時期がくる、というふうに流れに委ねてみるのも、ご自身の本心や確信を聞き取りやすくするコツかもしれません。
② 家族や身近な人たちからの承諾
学生の頃は、親をはじめ大人たちの進めや承諾が進路決定の要になることが多いと思います。
大人になってからは、パートナー、子供がいれば子供たちの年齢や教育などの事情、ほかのご家族メンバー、ペット、親族など、影響や繋がりの強い方々の理解や承諾が、進路や退路に影響を及ぼすでしょう。
周りが明からさまに意見や主張をしてくるかもしれませんし、むしろそういう会話はないが、「きっとこう主張するに違いない」「自分の進路で、困らせてしまうかもしれない」「この進路や退路では、責任をもてない」などと頭のなかでシミュレーションすることが多いようです。
しかし、実際は、同じ状況や条件に対して、家族や身近な人たちの間でその理解や認識は思いの外異なります。
興味深いことに、ご相談にいらっしゃるクライアントさんの多くは、ご自分自身のほうが、家族や身近な方々から多くの影響を受けているという意識が強めの傾向にあります。人間関係や仕事について、とかく受け身がちであり、それが関係や状況をうまくやっていく手段となっています。
そのため、自分自身の進路によって、家族や周り・・・はたまた漠然とした世間・・・は、どういう反応をするだろうか、許容されるか、やっていけるか、という思考回路に繋がりがちです。
Nさん「別々の仕事のサイクルなので、夫は私の仕事をどう思っているかよくわからないです。そばにいるとしんどい、というか。それで暫く口実をつくって、別居して暮らしをしているんですが。私が何か新しい道に進んでも大丈夫なのか?もう若くないことだし、このまま無難に生きたいくのがいいのか?」
おひとりで考えたりネットで調べはするけれど、頭にモヤがかかっているような、スッキリしない状態のようです。
家族や身近な人から承諾や許可が必要に感じる状況のときは、他ならぬご自身による承諾や許可が十分ではないことが多いようです。
ときには、はっきり家族や身近な人が口撃したとしても、ご自身が気づいていない葛藤や矛盾を突いてきている場合が結構あります。
たとえば、自分の進路や退路の主張は本意であるものの、その影に何か別の事情や、逃避や駆け引きのような口実を含んでいるときにも、身近な人や状況が思わぬ抵抗を起こすように“みえる”ことがあるかもしれません。
家族、身近な人、「事情」は、物理的な物事によって賛否を表しているものではなく、本意・本当のところに反応を示す傾向があります。
そのようなときは、たしかにタイミングやものごとの折り合いがあるのかもしれません。
進路や退路がうまくゆかないようなときは、それも、とある指針を示しているのかもしれません。
③ いにしえの慣習や信念体系
定年まで数年あるものの、定年が近づくことで終盤の昇格が続いているSさん。
周りからすれば羨ましいであろうキャリアップですが、ご自身はしがらみや仕事の駆け引きのない自由な生き方にシフトしたい、と悩まれていらっしゃいます。
仕事が安定していると羨ましく思われるでしょうが、Sさん自身の苦悩やストレスは仕事に関係することばかりで、「自分の人生をちゃんと生きている気がしない」と精神的(魂的)にはお辛そうです。
ある意味、所属している仕事先のエネルギーの影響は強く、Sさんの個人の意思やプライベートに対して勝ってしまっているようです。
Sさんの仕事と進路に関するエネルギーを拝見すると、日本の戦中戦後のドキュメンタリーフィルムのように、セピア色・白黒の早回しの映像が視えます。
戦時中に兵隊さんを見送ったり、戦後の復興に勤む当時の人々の姿を撮った映像を、みなさまもどこかで見たことがあるのではないでしょうか。
生きるために必死で働く当時の市況や人々の暮らしをドキュメントしたものです。
Sさん自身がその時代には生まれていないものの、また親御さんや周りの人が当時の思想を話さなかったとしても、遺伝子や意識体には組み込まれているという象徴なのかもしれません。
Sさん「うちの親は、働いて一生懸命稼がないとダメ、という世代ですよ。うちの会社も元々はそういう体質かもしれません」
特に正社員のような雇用関係では、エネルギー的にも所属先の意向には贖えないものですね。
現状のSさんの進路としては、今は、ふだんのご自身の暮らしや休日を、仕事から切り離してパワフルに充実させることが肝要なようでした。
そもそもお仕事に関するご相談のために、ご自身の休日やセッション料を使ってしまっていますし(^^;
④ 社会における進路・人生の進路
子供の頃から、生まれ育った状況からか、まるで魂が本質を活かすように用意された進路を進行する人たちもいます。
この場合は、人生のどこか、中盤などで、社会における進路(キャリア)を考える時期がくるようです。
一方、社会のなかで進路を選んできた方々は、節目となるようなイベント(結婚、子供、離婚、定年、etc)で、進路を選択することになりがちです。
そして、精神的、スピリチュアルな側面から人生の進路・退路についてご相談にいらっしゃるようなときは、次のフェーズを愉しみにしてよい状況であることが殆どです。
社会生活が長く、いわゆる「定年」を節目とする方々の多くは、ここからは社会の進路から解放された、人生の進路に移行します。
ところが、世代を跨いで共通に「将来の暮らし」「お金」「老化や不健康」のベスト3を案じるために、人生の進路が不安で不鮮明になる方が多いようなのです。
それらが備わっている方々は、「やりがい」「生き甲斐」などがプラスα(付加価値)の懸案になります。
集合意識の電波に繋がるこのような三つの懸念とプラスαは、ご自身の将来に、さも強く関係しているように認識させます。
特に社会において何をしてきたか(教育、仕事、生活、家族や人との繋がり)という生き様が人生であると、これらの懸念は、先々を不安にさせます。
社会に生きている人間ではあるものの、複数の領域に「生」を持っていることを、たまには思い出してみると、社会で懸念されがちな問題によって、ご自身の人生の進路や退路の選択を阻まれる必要は緩和されるでしょう。
慣れた価値観や慣習から切り替えるためにも、①の検討、相談、熟慮、悩む・・・のプロセスや時間を要することもあるでしょう。
わたしたちは、地球上の一生物であり、宇宙では意識という存在です。
もしかすると、生まれる前と肉体の死後のほうが異次元の「生」であり、この人生のほうが仮初めなのかも?!
・・・と話は飛躍しましたが、社会の枠や既成概念から自由になったところから、人生の進路に繋がることが多いようです。
人生の進路は、次元を跨げば、社会でも、自由な世界でも、それ以外でもマルチに共存できるものです。
今回は4つの異なる視点から、人生の進路・退路についてふれてみました。