ここでいうマインドコントロールは、本人に「自分でそう考えて、自分でそれを選択した」と思い込ませるような誘導手法です。そこに本人の自発的な意思があるかのように働きます。
似ている言葉に、洗脳があります。両者の使い分けは一様ではありませんが、洗脳は、物理的な圧力や強制による支配を強調して説明されることがあります。
マインドコントロールのほうは、心理や感情にうまくブレンドされるため、本人は自分の意思だと錯覚し、操られている自覚がないことがあります。
何らかのきっかけ、内なる青天の霹靂が起こるまで、マインドコントロールには気づきにくいようです。
とかく、どんな内容についてコントロールされたのかに関心が向くと思いますが、そもそも、「コントロールされた状態にある」ことが問題です。
最初のきっかけは、外部からの働きかけや他者によるものだとしても、その後は、本人が自分自身をマインドコントロールしていくことがあります。
また、その人のパーソナリティや置かれた状況によりますが、マインドコントロールされた人が、さらに他者へとコントロールを拡散することもあります。
スティーブン・ハッサンが提唱する「BITEモデル」では、行動・情報・思考・感情の4つの側面から、マインドコントロールの手法が整理されています。
現代は、直接、人とコミュニケーションをとる機会が減ってきているように感じます。一方で、情報によるマインドコントロールは優勢ではないかと考えられます。
人との関わりが多いほうがコントロールされそうですが、人との交流が遮断されたり、自分から関わりを避けすぎたりすると、マインドコントロールに対する免疫力が落ちる可能性があります。
他者に相談したり、中立的な、あるいはポジティブなアドバイスをもらったりすることが、コントロールを未然に防ぐ助けになるからです。また、相手が自分の味方にならなくても、自分から状況を言語化することで、自分自身に修正が入るきっかけになるかもしれません。
悪質な商法、詐欺、カルト教団などからターゲットにされなければ、多少のマインドコントロールは容認してもよいでしょう。
私たちの消費行動、トレンドやブームに乗ること、社会問題や課題に熱心になることなどにも、所属する社会やコミュニティの影響が及んでいます。自由意志も用意されています。それでも、日常生活で慢性的にマインドコントロールされた状態は、生理的に奇妙というか、不自然な魔法にかかっているように見えます。個人的な感性によりますが、独特の怖さや危うさがあります。
ところで、クライアントさんや生徒さんが集まると、過去にマインドコントロールされていた経験がある、という方が話を共有してくださいます。ご本人がコントロールと認定するものには、「共依存」の関係ともとれるものがあります。
たとえば、「自分のことをコントロールしてくるから離れている」「典型的な毒母でした」という親子関係。「私のことを『おかしい』と言われて鬱になりかけましたが、相手(パートナー)のほうが変だった」というパートナーとの関係などです。
真相はともかく、自覚されている時点で、マインドコントロールから距離をとり始めていらっしゃるのかもしれませんね。ただ、マインドコントロールをされやすいかどうかは、気をつけておくのが賢明でしょう。
何でも疑ってかかればよいかというと、批判的な思考が諸刃の剣になることもあります。たとえば、「正しさ」を求めすぎて、自分の直感をスルーしてしまうかもしれません。
コラムを読んでくださっているような、心や感情に関心のある方々は、対人関係におけるマインドコントロールは、むしろ破りやすいのではないかと思います。
一方、マス(大衆、みんな)がつくりあげた強いマインドコントロールに対しては、それに気づくことも、気づいたときに断ち切ることも、一苦労なのかもしれません。
それは、現代では、生き方や働き方、ジェンダー、世代などに関係し、自分自身のアイデンティティや生き様の軸になるようなものです。抗うのが難しく思えるものもありますが、今は(実際は、いつの時代もなのかもしれませんが)、マインドコントロールをされ続けるほうが、安定しているように思える時代でもあるかもしれません。
特にクライアントさんのご相談のなかで、ご自身にとっての「見本や理想がない」という状態のときは、「長年、ご自身をコントロールしていたものと、今後はどう関わるのか」を見つめ直すことを示唆しています。
ちょうど都合よく、マインドコントロールから抜け出すための口実や出来事があれば、それは利用してよいでしょう。それを機に、働き方、人間関係、ご自分のアイデンティティ、暮らし方などを変えていける方々もいらっしゃいます。
あいまいな時期もありますが、「本当にこのままでいいのかな」と自問するときは、ご自身にとっての何らかのマインドコントロールを解くサインである可能性があります。
自分自身に対するマインドコントロールは、大人になると、もはや信念化していることが多いですね。でも、不自然なマインドコントロールには、たびたび、それを正すようなサインが現れるように思います。
また、「ネガティブな情報を取り込みやすい」「安定していると思うが、何かに不安や不満を感じる」「無難だけど、つまらない」と感じるなら、マインドコントロールについて自問してみるチャンスかもしれません。





















